オンライン法律事務所タマ

企業が知るべき外国人雇用の労働法遵守

お問い合わせはこちら

LB014_外国人の労務管理に関する問題点

LB014_外国人の労務管理に関する問題点

2026/09/07

外国人労務、いま何が問題になっているのか──3つの論点で読む

こんにちは。今日は、外国人雇用に関して企業の法務・人事担当者の間で「これはまずいかもしれない」と話題になりがちなテーマを、3つに絞ってお届けします。「入管の書類さえ揃えれば大丈夫」で済んだ時代はとっくに終わっていて、いまは労働法・人権・入管法の3方向から企業がチェックされる時代です。順に見ていきましょう。

 

技能実習制度の「建前と現実の乖離」と、新制度への大転換

まず最大の論点が、長年批判の的だった技能実習制度の抜本的見直しです。もともとこの制度は、日本で培われた技能・技術・知識を開発途上国に移転することを目的とした、いわば国際貢献のための仕組みでした4。制度上、労働力の需給調整手段ではないと位置付けられていましたが、実態としては技能実習生が国内企業の貴重な労働力として受け止められており、制度目的と運用実態の乖離が長らく指摘されてきました1

現場感覚でもこのズレはよく語られてきました。海外から来る技能実習生の多くは「日本の技術を学びに行く」というより「出稼ぎに行く」感覚で来日しており、来てみたら賃金が安いことに気づき、しかし転職も認められない、という構造が失踪の温床になっていました9。実際、法務省のプロジェクトチームの調査では2014年から2018年の5年間で技能実習生の失踪者はのべ31849人にのぼると報告されています10。技能実習生への残業代未払いで受入れ企業が書類送検されたり、農家に199万円の支払いが命じられた事例も報じられています9。最低賃金以下の給与しか支払わず残業代も支払っていなかった事案もあり、体制整備は進んだものの、ハラスメントで通報をためらわせるような企業も現実には存在します8

こうした批判を受け、20231130日には「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が最終報告書を公表しました12。その最大の変更点は、現行の技能実習制度を廃止し、人手不足分野における人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を新設するという提言です1。未熟練労働者として受け入れた外国人を、基本的に3年間の就労を通じた育成期間において計画的に特定技能1号の技能水準の人材に育成することを目指す制度になる見込みで、従前とはかなり違うものになります56

注目すべき変更点はいくつもありますが、実務にインパクトが大きいのは転籍(職場移動)の柔軟化です。現行制度では「やむを得ない事情がある場合」に限定されていた転籍が、条件の拡大・明確化に加え、一定要件を満たせば本人の意向による転籍も認められる方向で提言されています7。さらに、就労開始時や特定技能1号移行時に一定の日本語能力試験の合格が要件化されるなど、受入れ企業側の準備コストも変わってきます7。現行の技能実習制度に基づく雇用形態を採用している企業としては、今後の法改正の動向を注視する必要があります57

 

労働条件・ハラスメント──「外国人だから安く」は通用しない

2つめの論点は、労働法遵守と人権対応です。ここは意外と「知らなかった」で済ませてしまう企業が今もあるのですが、原則として労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働者保護法規、労働契約法、雇用保険法・厚生年金保険法などの社会保障関係法令は、外国人にも日本人と同様に適用されます48。技能実習生や外国人留学生のアルバイトに対しても、当然に労働基準法が適用されるため、日本人と同等な待遇をしなければなりません17

労働条件面で押さえるべき点として、事業主は労働者の国籍を理由として賃金・労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをしてはなりません33。労働契約の締結に際しては、主要な労働条件についてその外国人労働者が理解できるよう明らかにした書面を交付することが求められ、日本語を理解できない場合には母国語による書面を交付することになります(労働基準法106条参照)33。賃金開示では、賃金の決定方法・計算方法・支払方法・税金・労働社会保険料・労使協定に基づく賃金の一部控除の取扱いを説明し、実際の手取り額を明示することが求められます33。社会保険の加入を拒否する外国人労働者は少なくないですが、加入は義務であるとしっかり説明したほうがよいとされています33

安全衛生面でも、通訳やマニュアルを使うなどして外国人労働者が理解できる方法で安全衛生教育を行うこと、工場内の標識や掲示にイラストなどを用いる工夫が求められています32。健康診断についても、その目的や内容を外国人労働者が理解できる方法で説明するよう努めなければなりません32

近年、外国人労働者もユニオン等に加盟し、違法な就業を強いる事業主に対して法的手段に訴える事例も目立ってきており、「外国人だから安く使おう」「外国人だから(違法なことをしても)わからないだろう」といった考え方はもはや通用しません17。劣悪な労働環境での強制的な雇用は人権侵害につながり、雇用企業のダメージにとどまらず、技能実習制度の存続や日本社会の国際的地位にも影響を及ぼしかねません40。「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」でも、外国人労働者は労働権に関する9つの個別課題の1つとして明示的に取り上げられており、サプライチェーンでの人権デューデリジェンスの対象論点になっています41。食品企業向けの手引き案でも、非正規雇用労働者や外国人労働者に対する社内規定・制度等での差別、国内調達先での外国人技能実習生の人権侵害などが具体的な懸念として挙げられています42。もはや「うちは国内だから関係ない」では済まないのです。

なお、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)では、労働者の性的指向・性自認等の機微な個人情報を本人の了解なく他の労働者に暴露することは「個の侵害」としてパワハラに該当するとされていますが53、外国人労働者に対する差別的言動なども同様に、事業主が講ずべき雇用管理上の措置義務の射程に入ってくると理解しておくべきでしょう。

 

在留資格管理の甘さと「不法就労助長罪」の重さ

最後は入管法まわりです。この分野で特に怖いのが不法就労助長罪で、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者、または業として外国人に不法就労活動をさせる行為に関しあっせんした者は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその併科に処されます(入管法73条の21)86。しかもこの罪を犯すと、労働者派遣事業や有料職業紹介事業の許可の欠格事由になります(労働者派遣法61号、職業安定法321)86

不法就労は「不法入国者を働かせた」というわかりやすいケースだけではありません。最も多いのは、在留資格ごとに定められた活動範囲を超えての就労で、例えば「技術・人文知識・国際業務」で在留する人を飲食店のホールスタッフとして働かせるようなケースが典型です86。留学生アルバイトの資格外活動許可の週28時間ルールを超過してしまう問題も、企業側の管理不足で発生しがちです84。留学生の在留資格「留学」は本来就労できず、資格外活動許可を受けても週28時間以内、教育機関の長期休業中でも18時間以内という制限があり(入管法施行規則1951)、資格外活動許可を受けていない留学生をアルバイトで雇うと雇用主も不法就労助長罪となり得ます88

もう1つ見落とされがちなのが在留資格取消制度です。現在の在留資格に該当する活動を3か月以上行わないと在留資格が取り消され得るため(入管法22条の4)、「技術・人文知識・国際業務」等の場合には、退職後3か月以内に再就職できないと帰国を余儀なくされる可能性があります34。外国人本人にとって退職は日本人以上に深刻で、企業側もやむを得ず解雇するときは最後まで再就職を支援することがトラブル回避のカギです34

雇用の入口・出口の手続きも意外と抜けが多いポイントです。事業主は新たに外国人を雇い入れた場合または離職した場合、ハローワークに外国人雇用状況の届出が必要とされています(雇用対策法28)82。外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、外国人労働者の雇用管理に関する責任者である「雇用労務責任者」の選任も求められます34。「知らなかった」では済まないので、雇用管理体制の見直しはぜひ一度やっておきたいところです。

 

おわりに

こうして並べてみると、外国人労務のポイントは制度そのものが大きく動いている(技能実習新制度)労働・人権面で「日本人と同等」が徹底されつつある、在留資格管理は刑事罰リスクと直結する、という3方向に整理できます。とりわけ、これまで技能実習制度に依存してきた企業ほど、単なる書類の切り替えでは済まない話になりそうです。有識者会議の提言は、外国人の人権保護というビジネスと人権の観点からも注目に値する内容とされており1、労務・法務・調達・サステナビリティの各部門が横串で対応する必要があるテーマだと言えます。次回、就業規則の見直しや外国人向けの説明資料を作るときには、ぜひこの3点をチェックリストとして使ってみてください。

AIの回答には誤りが含まれる場合があります。実際の文献もあわせてご確認ください。

----------------------------------------------------------------------
オンライン法律事務所タマ
東京都東大和市上北台3-429-24 サンライズビル305
電話番号 : 080-7026-2558


弁護士による非対面の法律相談

弁護士として労働問題に対応

弁護士による企業法務の相談

弁護士との顧問契約で築く信頼

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。